新幹線を乗車するのに必要な料金は、短距離であっても安くとは言えません。
在来線とは異なる新幹線用の特急料金がかかるからです。
そんな新幹線ですが、たった300円で新幹線車両に乗ることのできる区間があるのです。
それが、福岡県にある博多南線です。
今回は、その博多南線について紹介します。
博多南線とは
回送線が旅客線に
博多南線は、博多駅(福岡県福岡市)と博多南駅(福岡県春日市)を結ぶ約8.5kmの路線です。
この路線自体は1975年(昭和50年)3月に開設されていますが、そのときは客を乗せるための路線ではありませんでした。
山陽新幹線と九州新幹線の起点である博多駅の南には「博多総合車両所」という車両基地があります。
現在の博多南線は、元々は新幹線を車両基地に移動させるための回送線に過ぎませんでした。
その後、車両基地周辺地域から福岡市街地へのアクセスが悪いことを理由に、地元住民は当時の日本国有鉄道(国鉄)に回送線に乗せるように求めていました。
最終的に、回送線を客を乗せる旅客線としたのが博多南線なのです。
そして、車両基地内の西側に作られたのが「博多南駅」です。
もちろん、回送列車すべてを旅客列車としているわけではないので、現在でも回送線としての役割もありますが、車両基地周辺住民の通勤・通学を担い続けています。
旅客営業開始されたのは1990年(平成2年)4月で、九州新幹線が全線開業(博多・新八代間が開業)した2011年(平成23年)3月よりもずっと前ですが、現在では博多南線のほとんどの区間(約8.2km)が九州新幹線本線として使用されています。
新幹線車両を使うけど在来線
新幹線の回送線を使うため使用される車両は新幹線ですが、博多南線は在来線となっています。
これは、全国新幹線鉄道整備法の定義に外れることに由来するそうです。
全国新幹線鉄道整備法第2条では、「主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」のことを新幹線と定義しています。
話が逸れますが、この定義があるため「新幹線」の名がついている秋田新幹線と山形新幹線(いわゆるミニ新幹線)は法律上では在来線です。
在来線ではあるものの後述の特急券が必要となる関係上、青春18きっぷなどで乗車することは出来ません。
九州の路線だけどJR九州管轄ではない
博多南線は九州の福岡県内を走る路線であり、一部は九州新幹線の線路を使用します。
ですが、管轄はJR九州ではなくJR西日本です。
山陽新幹線の博多・小倉間もJR九州ではなくJR西日本の管轄です。
JR西日本管内である関係上、JR九州が発売している乗り放題きっぷでは、基本的に博多南線は対象外となっています。
在来線のみの乗り放題きっぷだろうと九州新幹線を含めた乗り放題きっぷだろうと、JR九州発売の乗り放題きっぷの含まれません。
料金
気になる料金ですが、運賃200円と特急料金100円を合わせた300円(おとな1人あたり)です。
新幹線の車両にたったの300円で乗ることができるのです。
ちなみに、通常の新幹線では隣の駅までの新幹線特急料金だけでも最安870円、博多・小倉間で990円かかる(これに加えて運賃も必要である)ので、いかに安いかが分かると思います。
博多南線(博多駅→博多南駅)
2019年(令和元年)9月13日、実際に乗車したので、その様子などをまとめてみました。
2019年10月にJR西日本を含む多くの鉄道会社で運賃の値上げが行われましたが、この博多南線の運賃・特急料金を変わっておりません。
博多駅の分かりにくいきっぷの購入と発車標
博多南線は在来線扱いではあるものの、元々新幹線の回送線だったため、新幹線ホームからの乗車ということになります。
そのため、基本的には新幹線改札口近くの券売機できっぷを買うこととなります。
自動券売機で普通に買うと、在来線扱いだからか、近郊区間のような小さなきっぷが出てきました。
さて、次の列車の発車時刻などを知らせる発車標ですが、大阪・東京方面へ向かう列車や熊本・鹿児島方面へ向かう列車の出発案内の中には博多南線の列車が書かれていません。
発車標は端の方に小さく設置されているのです。
明らかに後付感がありますが、先ほども書いたように博多南線は九州新幹線よりもずっと前に開業しています。
というわけで、16番のりばへ向かいます。
博多駅16番ホーム
16番ホームにやってきました。
今回乗車するのは、16時10分発の列車です。
博多駅は、九州新幹線・山陽新幹線・東海道新幹線の新幹線が乗り入れる駅ですが、それらの列車のような列車名(「のぞみ」「ひかり」「こだま」「みずほ」「さくら」「つばめ」)がつけられていません。
キティちゃん新幹線
今回乗車した新幹線車両は500系新幹線だったのですが、ただの500系新幹線ではなくキティちゃん新幹線でした。
そのため、車内はキティちゃん仕様となっています。
もちろん、すべての号車がそうなっているわけではありません。
ちなみに、山陽新幹線内ではコラボイベントが行われるのですが、博多南線ではそのようなものはありません。
座席に関してですが、全席自由席となっています。
山陽新幹線内で普通車指定席となっている座席も、博多南線内では普通車自由席です。
今回は、4号車に乗車しました。
九州新幹線から枝分かれする博多南線
16時10分ごろ、博多駅を出発しました。
しばらくは九州新幹線と同じ線路を走ります。
分岐をすぎると、下っていきます。
そして、上下線が合流します。
博多南駅に到着
16時22分ごろ、博多南駅(福岡県春日市)に到着しました。
駅名標の下側が青色の帯となっていることからも、この駅がJR九州ではなくJR西日本の管轄であることが分かると思います。
博多南駅と博多総合車両所
博多南駅の出入り口は、西側のみです。
先ほども説明したように、この駅は博多総合車両所構内にあります。
そのため、ホームからはたくさんの新幹線を見ることができます。
遠回りしなければならないものの、頑張って歩いて東側に行ってみました。
道路が車両所よりも低い位置にあるので、新幹線は少し見にくいです。
道路からよりも博多南駅のホームから見たほうが、全体的に見ることができて良いかもしれませんね。
博多南線(博多南駅→博多駅)
記念スタンプ
博多南駅には、記念スタンプが設置されています。
しっかりスタンプを押すための専用の紙も用意されています。
スタンプには、「新幹線車両基地のある駅」と書かれています。
きっぷの購入
博多駅は様々な方面への列車がある駅のため大変ですが、博多南駅は博多方面の列車しかないため、きっぷの購入で苦労することはないと思います。
きっぷ自体は、行きと基本的には同じです。
車両基地が見える単線ホーム・博多南駅
あまり触れていませんでしたが、博多南駅には1つしかホームがありません。
博多駅到着後
博多駅に到着しました。
先ほどまで乗車していた新幹線は、博多駅到着後にこだま754号新大阪行きとなりました。
博多駅到着後に博多南駅の方へ引き返す列車もあるようですが、そのまま山陽新幹線の小倉・広島方面へ向かう新幹線となるものも多いので、乗り過ごしには注意が必要ですね。
うっかり寝てしまったばかりに、気づけば大阪にやってきてしまったなんてことがあるかも・・・?
余談
300円で新幹線車両に乗ることができる博多南線だが、実はそれよりも安い値段で新幹線に乗ることのできる路線があります。
それは、上越新幹線支線(上越線支線)の越後湯沢駅(新潟県南魚沼郡湯沢町)とガーラ湯沢駅の間の区間で、250円で乗ることができます。
ただし、この路線はガーラ湯沢スキー場へのアクセス路線であるため、スキーシーズンである冬季限定の営業となっています。
最後に
今回は、博多南線についてでした。
地元の通勤・通学に利用する人以外はあまり利用する機会がないかもしれませんが、乗る機会があった際に参考にしていただけたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。