JR九州で活躍している特急列車の1つ、「かもめ」。
60年もの歴史のある特急です。
その中でも885系電車が使用される特急かもめは「白いかもめ」の名で親しまれてきています。
ですが、西九州新幹線(長崎新幹線)が開業すると、その新幹線の種別が「かもめ」となり、現在の特急かもめは「リレーかもめ」となることが既に決まっています。
そのため、近いうちに今の区間を乗車できなくなってしまいます。
今回は、そんな特急白いかもめのグリーン車指定席に全区間乗車したので、そのレビューとして車内の様子や乗った感想などをまとめてみました。
(追記)この記事公開当時は西九州新幹線関連は不確定な情報も多く(路線名も記事公開の翌月に決定)、可能な範囲で修正しているものの最新情報と異なる場合がございます。
予めご了承ください。
目次
特急かもめ
特急かもめの概要
JR九州には、様々な特急列車があります。
その中で、主に博多駅と長崎駅を結ぶ特急が「かもめ」です。
「白いかもめ」と「黒いかもめ」
この特急かもめに使用されている車両には、885系電車と787系電車があります。
885系電車は車体全体が白いので、885系電車が使われている特急かもめは「白いかもめ」と呼ばれます。
「白いかもめ」という名称は、一部の駅でのアナウンスにも使われています。
それに対して、787系電車が使用されている特急かもめは、白いかもめに対して「黒いかもめ」と言うこともあります。
今回乗車したのは、白いかもめです。
885系電車のグリーン車
1号車の運転席側が、グリーン車となっています。
座席関係
まずは、座席を詳しく見ていきましょう。
右から、A席・C席・D席の1列+2列の座席配置(定員は12名)となっており、革張りの座席です。
2列側は一体化しているタイプが多い中、このグリーン席はすべての座席が独立しています。
さすがグリーン席ということで、座席の幅はかなり広いです。
各座席下には赤のレバーがあり、このレバーを上げることでロックを解除させて座席を回転させることができます。
1つ1つの座席が独立しているので、2列側のC席とD席を別の向きにすることもできます。
また、座席の横に青のレバーがあり、これは座席を倒すのに使用します。
倒し方ですが、少し変わっています。
レバーを後ろ(背もたれ側)に倒すと、座席の背もたれのロックが解除されます。
そして、自分の体重をかけることで座席を倒すことが出来ます。
自分の好みの角度にしたら、レバーを前に戻しロックをかけることでその角度が維持されます。
分かりにくいですが、座席は下の写真くらい倒れます。
体重をかけていない状態でロックを解除(レバーを後ろに倒す)と、背もたれは元の位置に戻ります。
フットレスト・レッグレストとテーブル
グリーン席ながら、フットレスト・レッグレストともにありません。
フットレストやレッグレストはないものの、前後の間隔は広く座席の下に空洞があるので十分に伸ばすことが出来ます。
ただし、最前列には金属の棒があるので、そこに足を乗せるなどして体勢を変えることが出来ます。
また、最前列は細長いテーブルが設置されています。
それ以外の列は、座席ごとにテーブルがあります。
座席が革張りの関係で、このようなテーブルになっていると思われます。
ドリンクホルダーとなる溝もあります。
このテーブルは、広げることが出来ます。
ちなみに、ビジネス客には不評らしいです。
まあ、パソコンを置くには小さく正面にはないテーブルなので、仕方ない評価でしょう。
観光客向けの特急車両と言えるかもしれませんね。
その他の座席周り
壁には、コンセントがあります。
JR九州の特急でお馴染みのタイプですね。
また、これとは別に最前列にコンセントがあるのですが、こちらは業務用コンセントなので乗客は使用を避けるべきでしょう。
清掃時などに使うのでしょうか。
座席上部に収納スペースがあるのですが、なんだか航空機の収納スペースに似ていますね。
A席側の収納スペースのところに、SOSボタンがあります。
展望席
下り列車(長崎方面の列車)で先頭となるグリーン車ですが、運転席との間が全面ガラス張りとなっています。
一番前の1号車1番D席からは、このように見えます。
運転席が高い位置にあることと列車の先頭形状の関係で、架線などしか見えません。
逆にこのデザインも相まって高速でそれらが過ぎ去っていくのを見るのはなかなか楽しいのですが、風景は少し見にくいですね。
なので、前面展望というよりは、運転の様子を楽しむ要素のほうが大きそうです。
立ってみれば、かなり見えるようになります。
このときグリーン車に僕1人しかいなかったので良かったのですが、他に乗客がいたときは諦めたほうが良さそうです。
ちなみに、このガラス張りの部分はスモーク状態(半透明)に切り替えることが出来るようになっています。
非常ブレーキと連動しているため、停車するたびにこの状態になります。
おそらく、人身事故のような緊急事態が発生した際に乗客にそれが伝わらないようにするためのものでしょう。
車内サービス
JR九州では、新幹線を含め車内販売やグリーン車サービスを行っておりません。
Wi-Fiに接続することが出来ます。
ただ、個人的に感じたのは、肥前鹿島・諫早間の4Gの電波があまり届かない場所では、通信状況があまり良くなかったように感じました。
特急(白い)かもめ3号の乗車レポート
今回は、特急(白い)かもめ3号に乗車しました。
鹿児島中央駅のみどりの窓口で特急券を購入しようとしたときにはグリーン席はどの座席も埋まっていなかったので、1番D席を取りました。
ちなみに、乗車券は3日間連続でJR九州が乗り放題となる「ぐるっと九州きっぷ」を使用しています。
この日は、2日目でした。
博多駅
2021年(令和3年)3月14日、博多駅(福岡県福岡市博多区)にやってきました。
今回乗車する6時33分発長崎行きの特急かもめ3号が表示されています。
終点の長崎駅までの停車駅は、二日市・鳥栖・新鳥栖・佐賀・肥前山口・肥前鹿島・諫早・浦上です。
列車によっては二日市駅もしくは肥前山口駅のどちらかを通過するので、事前に確認しておいたほうが良いでしょう。
3番のりばに向かいます。
ホーム上では、乗車位置案内がされています。
6時25分ごろ、3番のりばに列車がやってきました。
かつて、特急白いかもめに使用されていた885系電車は黄色の帯だったのですが、今では特急白いソニックと同じ青紫色の帯に統一されています。
運用上の自由度を高めるためのようです。
1号車は、中央に扉があります。
扉を入ってデッキ左側にグリーン車(グリーン席)の入り口があります。
基本的にデッキや号車を区切る扉は自動で開くのですが、グリーン席に入るこの木の扉のみ手を触れる必要があります。
そういうところからも特別感を感じますね。
中に入ったのですが、駅に停車中のため、まだ運転席との間のガラスはスモーク状態です。
そういえば、この日で人生で初めてグリーン車を利用してからほぼ2年になります。
グリーン車に乗るのは2019年(令和元年)11月ににちりんシーガイア7号で博多駅から宮崎空港駅まで6時間弱乗ったとき以来なので、結構久々です。
きっぷを購入した時点では自分1人だけでしたが、もう1人グリーン車に入ってきました。
その方は、途中の佐賀駅(佐賀県佐賀市)で下車されて、それ以降は終点の長崎駅まで僕1人でした。
6時33分ごろ、博多駅を出発しました。
検札に関してですが、現在の感染拡大防止策として乗務員によるきっぷの拝見のみで、スタンプは押されません。
少なくとも、JR九州の列車はすべてそのような措置が取られています。
カーブの多い区間と振り子式車両の885系電車
7時33分ごろ、肥前山口駅(佐賀県江北町)を出発しました。
1分ほどの遅発です。
肥前山口駅を出ると、佐世保線と分かれます。

そして、ここからは単線区間となります。
肥前鹿島駅(佐賀県鹿島市)を過ぎると、有明海の入り組んだ沿岸部に沿ったカーブの多い区間になります。
特に、肥前七浦駅(佐賀県鹿島市)以降はカーブの多さを乗っていてすごく感じます。
そして、写真ではうまく撮ることが出来なかったのですが、カーブに進入するたびに通常よりも車体が傾くのを感じることが出来ます。

これは、この885系電車が振り子式車両だからです。
振り子式車両とは、簡単に言えばカープを走る際に車体も傾くことでスピードを落とさずに走行することが出来る車両のことです。
とはいっても、他の区間に比べると減速しています。
車内散策
肥前鹿島駅から次の停車駅である諫早駅までは時間があるので、その時間に軽く車内を散策しました。
車内案内
1号車の扉付近には、車内案内があります。

1号車
1号車のデッキからグリーン車に入るまでに2つの扉があるのですが、その中間にはちょっとした空間があります。


その反対側には、先ほどの車内案内には書かれていませんが、トイレがあります。

おそらくグリーン車内にあるため、グリーン券を持っていない乗客が来るのを防ぐため車内案内には書かれていないのでしょう。
グリーン車の反対側は、普通車指定席となっています。

ガラス扉の上部は透明になっており、案内表示器をデッキから見ることが出来るようになっています。
1号車の普通車指定席は、このようになっています。

グリーン車指定席とは異なり、2列+2列となっていることが分かると思います。
後方には、荷物を置くスペースがあります。
他の号車はお客さんがいた関係で撮らなかったのですが、後方の普通車自由席の座席は革張りではなくモケットです。
昔は全席革張りだったのですが、変更となりました。
ギャラリー(コモンスペース)
2号車にはギャラーがあります。



観光列車ではなくただの特急列車ですが、アートを楽しむことが出来ます。
特急かもめと西九州新幹線(長崎新幹線)
諫早駅に近づいてきました。
奥の方を見ると、何やら新しい高架が見えてきました。

これは、来年2022年(令和4年)秋に開業予定の九州新幹線西九州ルートの高架です。
(追記)長崎新幹線の愛称がよく使われていましたが、正式名称は西九州新幹線となりました。
長崎本線の肥前山口・諫早間は有明海沿岸を通っていますが、西九州新幹線は佐世保線にある武雄温泉駅(佐賀県武雄市)から佐賀県嬉野市や長崎県大村市を経由して諫早駅、さらに長崎駅まで向かうルートとなっています。
そして、西九州新幹線開業とともに現行の特急かもめは役目を終えてしまうのです。
また、現在乗車中の区間である長崎本線の肥前鹿島・諫早間は、西九州新幹線開業に合わせて非電化区間となってしまいます。
(追記)長崎本線の非電化区間は、肥前鹿島駅の1つ隣(南側)の肥前浜駅(佐賀県鹿島市)から先と変更となりました。
また、諫早・長崎間の新線(市布経由)も電化廃止となります(諫早駅より東側が非電化となること、諫早駅より北へ伸びる大村線が元から非電化区間だったことに由来)。
そして、西九州新幹線の開業日は2022年9月23日、嬉野市の新駅は「嬉野温泉駅」、大村市の新駅は「新大村駅」となることが決定しました。
新大村駅に関しては、在来線の大村線にも開業することで武雄温泉駅とともに乗り換え可能駅となるようです。
また、リレーかもめは肥前山口駅から先は佐世保線の武雄温泉駅までの特急列車ですが、それと同時に新たに「特急かささぎ」として肥前鹿島駅までの特急列車を設定するようです。
開業まであと1年くらいということで、大まかな部分は完成しているように感じました。

8時14分ごろ、諫早駅(長崎県諫早市)に到着しました。
肥前山口駅を出発してから40分ほど経っていますが、西九州新幹線ではどれほど早くなるのでしょうか。
8時16分ごろ、諫早駅を出発しました。
西九州新幹線は、諫早駅を出るとトンネルに入るようです。
長崎駅に到着
長崎駅に近づくと、再び西九州新幹線の高架が見えてきました。

8時35分ごろ、終点の長崎駅(長崎県長崎市)に到着しました。

この駅は、長崎本線の始発・終着駅です。

約2時間、お疲れさまでした。

この長崎駅は最近高架化されたのですが、旧駅舎はまだ少しだけ面影を残しています。

乗った感想
グリーン席に関して
革張りの座席というのはあまりないので、少し高級感を感じました。
ただ、普通車も革張りなのであまり特別感がないのが残念かなと思っています。
さらに、革張りゆえに若干滑るような気がしました。
カーブが多く、振り子式車両であるために大きく傾くため、余計にそう感じたのかもしれませんね。
ここまでマイナスな部分ばかり書きましたが、やはりグリーン席なのでノビノビと座ることが出来るのはメリットだと思います。
885系電車の特徴とそれ故に・・・
885系電車の最大の特徴は、振り子式車両となっていることです。
長崎本線の肥前鹿島駅と諫早駅の間は特にカーブが多いのですが、そのため何度も左右に大きく傾きます。
また、構造上の問題か、直線を高速で走行している際もまあまあ揺れているように感じます。
そんなこともあり、僕は少し酔ってしまいました。
僕は普段乗り物酔いをしないんですけど、酔ってしまいましたね・・・。
最後に
今回は、特急白いかもめのグリーン車指定席のレビューでした。
西九州新幹線の開業によって(車両そのものがなくなるわけではありませんが)このような乗車ができなくなると思うので、機会があればぜひ乗ってみてください。
ただ、人によっては座席が合わなかったり酔ってしまったりするかもしれないので、少し注意が必要です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。