「8月6日」と聞いて、何を思い浮かべますか?
日本人の多くは、1945年(昭和20年)の広島での出来事が浮かんでくることでしょう。
本題ですが、8月6日はかつて鹿児島県で大きな豪雨災害のあった日でもあるのです。
そして、この災害と関係が深いのが、日豊本線の秘境駅・竜ヶ水駅です。
今回は、8月6日に竜ヶ水駅に行ってきました。
目次
竜ヶ水駅へ
毎度おなじみ鹿児島中央駅(鹿児島県鹿児島市)から向かいます。
竜ヶ水駅は、鹿児島中央駅からだと宮崎方面の2つ隣にある駅です。
きっぷを購入
近距離なので普通の券売機でも280円のきっぷを買えばいいのですが、行き先が書かれているきっぷを購入したかったので指定席券売機で購入しました。
竜ヶ水駅へ行く際の注意点
竜ヶ水駅に行く上で、注意しなければならない点があります。
それは、特急列車はともかくとして、一部の普通列車も竜ヶ水駅を通過する点です。
駅の時刻表、発車標、乗り換えアプリ等でしっかり確認するようにしましょう。
1年前の青春18きっぷ旅のときの写真ですが、発車標にて竜ヶ水駅に停車しないことが表示されていました。
鹿児島中央駅を出発
今回は、17時33分発(国分経由)延岡行きの普通列車に乗りました。
17時33分ごろ、鹿児島中央駅を出発しました。
竜ヶ水駅に到着
鹿児島中央駅の1つ隣の鹿児島駅(鹿児島県鹿児島市)には数分で着くのですが、そこから竜ヶ水駅までは10分近くかかります。
17時45分ごろ、竜ヶ水駅(鹿児島県鹿児島市)に到着しました。
降りるだけで珍しがられる駅
この駅では、ホーム側のすべてのドアが開きます。
この駅は利用する人がほとんどいないので、列車を降りるとかなり珍しがられると思います。
列車を見送った際にも、かなり珍しい目で見られました。
ほぼ使う人がいない竜ヶ水駅
1日の利用者が数人の県庁所在地の駅
竜ヶ水駅は、鹿児島県鹿児島市にある無人駅です。
鹿児島県の県庁所在地・鹿児島市にあり、九州新幹線の始発・終着駅である鹿児島中央駅の2つ隣の駅ですが、1日の平均利用客数はたったの数人。
利用者が全くいない日もあることでしょう。
SUGOCA鹿児島エリアにして交通系ICカード利用対象外
この駅は、SUGOCAの鹿児島エリア内に位置します。
しかしながら、SUGOCAやSuicaなどの交通系ICカードを使用することが出来ません。
そのため、鹿児島エリア内の駅から竜ヶ水駅まで、もしくは竜ヶ水駅から鹿児島エリア内の駅への乗車の際にSUGOCAなどの交通系ICカードは使えません。
運賃の支払いに関しては、後述の補足で詳しく触れています。
駅構内
駅の入口は、下の写真のような感じとなっています。
まあ、よくある無人駅です。
中には、いくつかの椅子が用意されています。
この全ての椅子が同時に使われることは、ほとんどないと思いますが。
駅の中には、時刻表と近距離きっぷ運賃表がしっかり設置されています。
近距離きっぷ運賃表には、1000円未満までの範囲しか書かれていません。
また、時刻表を見れば分かりますが、列車が1時間以上停車しない時間帯があります。
この区間は普通列車がそれなりの本数走っているのですが、その一部はこの駅を通過するため時刻表に空白があるのです。
ただ、日豊本線の霧島神宮駅(鹿児島県霧島市)と西都城駅(宮崎県都城市)の間の無人駅よりは多いんですよね・・・・。
利用者は竜ヶ水駅のほうが圧倒的に少ないのですが、一部の普通列車は通過するとはいえ、この区間は通勤・通学などの需要がある関係で列車の本数が多いですからね。
駅周辺
駅を出て、左手(鹿児島中央方面)へ歩くと、踏切があります。
この踏切を渡った先には、国道10号があります。
押しボタン式の歩行者用信号機があるのですが、果たして使う人はいるのでしょうか。
竜ヶ水駅と8.6水害
ここ竜ヶ水駅は、いわゆる「8.6水害」で有名な駅です。
「8.6水害(豪雨)」とは1993年(平成5年)8月6日に鹿児島市を中心とした地域を襲った集中豪雨災害のことで、48名の犠牲者と1名の行方不明者が出ました。
この水害と同月1日に鹿児島県姶良郡を中心とした地域を襲った「8.1水害」を含む一連の豪雨災害を、気象庁は「平成5年8月豪雨」と正式に命名しています。
訪れた2020年(令和2年)8月6日は、8.6水害からちょうど27年の日でした。
鹿児島市北東部は、切り立った山が約10km続く海岸線となっています。
竜ヶ水駅付近は、その中ほどに位置しています。
そんな竜ヶ水駅の両側で土石流が発生したことなどで、鉄道(日豊本線)、道路(国道10号)共に完全に孤立してしまいました。
その中には、竜ヶ水駅に停車中の普通列車も含まれていました。
この際に土石流の危険を感じた運転士が、自らの判断であえて崩れそうな箇所に列車を停車させ、乗客のいない車両を堤防代わりにして乗客を避難させたといいます。
このことにより、(乗務員の指示を無視して列車内に留まって死亡した乗客3人を除き)乗客は土石流発生直前に避難することに成功しています。
このときに避難救助活動に従事した運転士1人が、3週間後に喘息発作により亡くなっています(その後、労災認定)。
孤立した人の一部は土石流に巻き込まれて錦江湾に投げ出されたものの、近くの漁船や桜島フェリーなどによって救助されたそうです。
そんな8.6水害ですが、海側のホームには復興記念碑があります。
下に、この記念碑に書かれている内容を文字起こししました。
竜ヶ水災害復旧記念碑
平成五年夏、鹿児島県下は記録的な長雨と度重なる豪雨に見舞われ
各地で甚大な災害が発生した。特に八月六日の鹿児島市を中心とする
集中豪雨により甲突川の大氾濫で市中は水没し、国道・鉄道共に
寸断され陸の孤島と化す状況であった。
ここ竜ヶ水地区では山腹の崖崩れが土石流となり、数十箇所で
日豊本線とこれに並行する国道10号線を分断し、通行者住民
約二千五百人が閉じこめられた。
折しも竜ヶ水駅では豪雨のため停車中の上下2本の列車が
錦江湾にまで達する大規模な土石流の直撃を受け
車両三両が押し潰され大破したが幸いにも乗務員の機転により
三百三十人の乗客は直前に脱出したあとであった。
日豊本線の一日も早い復旧をと昼夜に亘る関係者の尽力により
九月十九日、四十四日ぶりに開通した。
この碑は復旧開通を記念すると共に再びこのような
災害が繰り返されないことを願って建立したものです。平成六年三月吉日
この記念碑に使われている石は、その土石流の中に含まれていたもののようです。
この碑の石は、土石流の中に含まれていたもので
大席が9トン、碑文石が5トンの重量です。
写真では伝わりにくいのですがかなりの大きさがあり、土石流の規模の大きさを物語っています。
利用者が少ないのは、8.6水害の影響もあるようです。
そのためわざわざお金のかかるSUGOCA対応をせず、通過する普通列車も設定したのでしょう。
日豊本線は少しの雨で列車が止まることが多いのですが、8.6水害のことを考えると仕方ないですね。
やはり安全第一ですから。
竜ヶ水駅を出てすぐのところには、この地区が土石流の危険がある地域である看板がいくつかあります。
また、「急傾斜地崩壊危険区域」でもあるようです。
急な斜面となっているのは、先ほどの写真からも分かると思います。
竜ヶ水駅を出発
駅を降りて、約15分。
鹿児島中央方面の普通列車がやってきました。
今回は駅を降りてから割とすぐに帰りの列車がやって来ましたが、時間帯によっては(列車交換のため停車することはあっても)全然列車に乗ることができないことがあるので、事前に列車の時間を確認することをオススメします。
補足:竜ヶ水駅からの乗車に関して
ほとんど乗車証明できない件
駅には、「車掌乗務列車では、車内にて車掌よりきっぷをお買い求め下さい。」と書かれていますが、ワンマン列車が多いため車内できっぷを買うことが出来ないことがほとんどです。
通常、自動券売機もないような無人駅に到着したワンマン列車に乗車する際は、1両目の後ろ側のドアから乗り、その際に整理券を取ることとなっています。
そして、有人駅での下車の場合はその整理券を駅員さんに渡して精算してもらい、無人駅の場合はバスと同じように運賃と整理券を運転席横の運賃箱に入れることになっています。
ですが、無人駅で自動券売機がないのにも関わらず、到着した列車は有人駅のようにすべてのドアを開けるのです。
当然、整理券も出ません。
これでは、乗車駅を証明しようがありません。
唯一の頼みの綱は、来る際に使用したきっぷでしょう。
ですが、竜ヶ水駅は無人駅であるため使用済みのきっぷまたは運賃はきっぷ入れ(運賃箱)に入れることになっており、律儀にそのきっぷを回収ボックスに入れてしまうと乗車駅の証明が出来ません。
今回の場合
今回の僕の場合、行きのきっぷを記念にもらいたかったために運賃箱に入れず、ずっと持っていました。
そして、竜ヶ水駅から鹿児島中央駅に戻った際に、鹿児島中央駅の有人改札にて申告をして行きのきっぷに乗車記念(使用済み)スタンプを押していただいた上で、それを竜ヶ水駅からの乗車証明としました。
竜ヶ水駅では運賃箱にきっぷや運賃を入れることとなっているため、これが正当な手順かどうかわかりません。
ただ、これで不正乗車を疑われたとしても、僕の場合は竜ヶ水駅で写真を撮っているのでなんとかなると思っていました。
そもそも、こうするしかなかったというか・・・。
JR九州に確認してみたものの・・・
この件に関して、鹿児島中央駅の駅員さんに確認してみたのですが、曖昧な回答しか返ってきませんでした。
多分、利用者が極端に少ないので、こういうことをあまり想定していないのかもしれませんね。
結論
この問題、現在も解決していないような気がします。
なので、事前に竜ヶ水駅からのきっぷを購入していたほうがトラブルになりにくいと思います。
くれぐれも不正乗車だけはしないようにしてくださいね。
最後に
今回は、竜ヶ水駅について様々な視点でまとめてみました。
県庁所在地にある秘境駅の1つですが、いろんなことを考えながら訪れてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。