皆さんは「乗車券」と聞いてどんなものを思い浮かべますか?
一般的に、「片道乗車券」と「往復乗車券」はよく知られた乗車券でしょう。
では、「連続乗車券」という乗車券をご存知でしょうか。
おそらく知らない人が大半だと思います。
しかし、この乗車券のことを知っているとちょっと得することがあるのです。
今回は、そんな連続乗車券について、実際に僕が利用したときの様子も交えながら解説します。
この記事に掲載している運賃は、購入時のものです。
連続乗車券
片道乗車券と往復乗車券の決まり
片道乗車券はある駅からある駅へ移動する一方通行の乗車券、往復乗車券は、同じ区間の同じ経路を往復する乗車券です。
往復乗車券には、新下関・博多間において特例があります。
この区間は山陽新幹線と在来線では別経路ですが、往路と復路で別経路とした場合でも特例として往復乗車券となります。
ですが、片道乗車券では途中で折り返して同じ経路を2度通ったり、別経路で同じ駅に到達したあとにそれを超える経路にすることはできません。
このような経路は同じ区間・同じ経路の条件を満たさないため、往復乗車券とすることもできません。
一周する経路や6の字型の経路といった一筆書きの乗車券は発券できますが、書き順とは逆方向の6の字型や8の字型の経路の乗車券は発券できません。
なので、8の字型の経路のような乗り方をする場合、別々のきっぷとする必要があります。
連続乗車券
このように片道乗車券や往復乗車券とすることができない経路で、2枚の片道乗車券を連続した区間の乗車の場合のきっぷが「連続乗車券」です。
JR東日本のホームページには、以下のように書かれています。
乗車区間が1周してさらに超える場合、または、乗車区間の一部が重なる場合は、営業キロ、換算キロまたは運賃計算キロは1周となる駅または重なる駅で打ち切って計算します。このような場合は片道乗車券ではなく連続乗車券となります。この場合の有効期間はそれぞれの区間の営業キロに応じた有効期間を合算したものとなります。
上の図の例でいうと、「A駅→B駅」と「B駅→C駅」の2つの片道乗車券を組み合わせたものが連続乗車券です。
「連続」となっているように、1枚目の着駅と2枚目の発駅が同じ駅でなければなりません。
また、3区間以上の連続乗車券は発券できません。3区間以上の場合は、1区間の片道乗車券や2区間の連続乗車券を複数発券する必要があります。
実際の連続乗車券
下の写真は、実際に僕が購入した連続乗車券です。
このきっぷは、鹿児島本線および九州新幹線の鹿児島中央・川内間が重複しています。
また、1枚目の着駅と2枚目の発駅が同じ「川内駅」です。
ぱっと見だと、普通の乗車券と同じです。
ですが、きっぷの上側を見るとそれぞれ「乗車券(連続1)」「乗車券(連続2)」と書かれているのが、分かると思います。
これが、連続乗車券の特徴です。
連続乗車券のメリット
有効期限が2枚の乗車券を合算したものとなる
通常、片道乗車券の有効期限は独立したものとなります。
しかし、連続乗車券の場合の有効期限は、2枚のきっぷの有効期限を足し合わせたものとなります。
例えば、「A駅→B駅」の有効期限を3日間、「B駅→C駅」の有効期限を4日間とします。
別々の片道乗車券として購入した場合は、それぞれの有効期限内で使わなければなりません。
しかし、これを連続乗車券とした場合、どちらのきっぷも有効期限はそれぞれのものを足し合わせた期間となります。
今回の場合は7日間となります。
そのため、「A駅→B駅」で6日かけて使うなど、より自由なものとなります。
学割証の節約になる
学割は、高校・大学などに通う学生が100キロを超える区間を乗車する際に適用できます。
乗車券が2割引きとなる非常にお得なものですが、購入の際に学校で発行された学校学生生徒旅客運賃割引証(以下、「学割証」)をJRに提出しなければなりません。
学割証は、きっぷ1枚購入するごとに1枚提出する必要があります(往復乗車券はセットで購入するものなので、きっぷ1枚とカウントします)。
そのため、2枚の片道乗車券として購入する場合は学割証を2枚提出する必要があるのですが、連続乗車券の場合に必要な学割証は1枚なのです。
実際、学割証には「片道」「往復」のほかに「連続」という項目があります。
学割証は各学校で発行枚数の上限が決まっているため、できるだけ節約したいものです。
払い戻し手数料が1枚分で済む
きっぷを購入後、旅行などをやめることとなり払い戻したことがあるでしょう。
通常、乗車券の払い戻しはきっぷ1枚につき220円の手数料が必要となります。
2枚の別々の片道乗車券として購入した場合は、そのそれぞれに手数料がかかるため440円の払い戻し手数料がかかります。
しかし、連続乗車券の場合は220円で済むのです。
(おまけ)自己満足
きっぷの効力とは関係ない話ですので、軽く読んでいただければ。
連続乗車券を必要とする場面はそう多くないと思いますし、そもそもこの制度自体知っている人が少ないはずです。
そのようなきっぷを手にしたという自己満足も、連続乗車券のメリットの1つかもしれませんね。
連続乗車券のデメリット
次にデメリットですが、特にないと思います。
連続乗車券の注意点(途中下車・運賃計算など)
連続乗車券は有効期限が合算される以外は、独立した片道乗車券となります。
そのため、途中下車できるかどうかも運賃もそれぞれのきっぷ次第です。
今回僕が購入したきっぷの場合で見てみましょう。
枕崎・川内間は133.9キロあるため、この区間内は途中下車が可能です。
しかし、川内・国分間は79.8kmで100キロないため、途中下車ができません。
有効期限のように2つの距離を足した213.7キロが双方のきっぷに適用されるわけではないため、このようなことになるのです。
また、運賃もそれぞれ別で計算されたものの合計という形になるため、安くなるわけではありません。
ただし、後述のように使い方次第ではこの買い方が一番得ということになります。
細かい点で言えば、往復券は復路のきっぷに値段が書かれているのに対して、連続乗車券はそれぞれのきっぷに値段が書かれています。
運賃を別々で計算していることがよく分かると思います。
そう考えると、連続乗車券に大したメリットはないです。
ただ、役立つ場面もあるので、次は実例を交えてメリットを紹介しようと思います。
実際に使ってみた
2020年(令和2年)10月17日から鹿児島県内の様々な場所に用事があり、その際に連続乗車券を使用しました。
なぜ連続乗車券を購入したのか
移動計画
まず、どのような予定を立てていたのかを示します。
10月17日(土)[1日目]
- 鹿児島中央駅から枕崎駅まで行き、下車
- 枕崎駅から指宿駅まで行き、下車
- 指宿駅から鹿児島中央駅まで行き、下車
10月19日(月)[3日目]
- 鹿児島中央駅から伊集院駅まで行き、下車
- 伊集院駅から川内駅まで行き、下車
- 川内駅から国分駅まで行き、下車
- 国分駅から鹿児島中央駅まで行き、下車
これは、鹿児島県のマンホールカードを集めるためでした。
目的はさておき、1つの駅だけに用事があるわけではないので、何度も下車する予定となっています。
あと、日曜日(2日目)が空いているのは、その日に沖永良部島に行くためです。
通常の乗車券購入での問題点
今回のポイントは、以下の2つです。
- 枕崎・鹿児島中央間と鹿児島中央・川内間でそれぞれ途中下車をしたいが、それぞれ100kmないため別々に買うと途中下車ができない。
- 枕崎・川内の乗車券では、上記の途中下車の件は問題ない。
しかしながら、有効期限が2日間であり、枕崎・鹿児島中央間と鹿児島中央・川内間の利用に1日間を空ける必要があるため、有効期限が足りない(3日間必要)。
順に説明します。
枕崎・鹿児島中央間は87.8キロ、鹿児島中央・川内間は46.1キロです。
途中下車は100キロを超えるきっぷである必要があるため、これらの片道乗車券では途中下車することができません。
この場合、下車する予定の駅までのきっぷと、その駅からのきっぷを買わざるを得ません。
そのため、初めは以下のようなきっぷを購入していました。
一部例外の区間があるのですが、基本的には分割して購入すると割高となってしまいます。
今回の場合、
( 950 + 1020 ) – 1850 = 1970 – 1850 = 120
となり、指宿駅で分割したために120円高くなっています。
枕崎・川内間で買えばいいのではないかと思われる方もいるかもしれません。
確かに、枕崎・鹿児島中央間の87.8キロと鹿児島中央・川内間の46.1キロを足すと
87.8 + 46.1 = 133.9
133.9キロとなり、100キロを超えるため全区間で途中下車することができます。
ですが、有効期限という別の問題点があります。
200キロまでの乗車券の有効期限は、2日です。
しかし、今回枕崎・鹿児島中央間を10月17日、鹿児島中央・川内間を10月19日に利用予定なので、有効期限2日では足りません。
一番の理想は枕崎・鹿児島中央間の利用日と鹿児島中央・川内間の利用が連続していることですが、各日の予定を考慮するとそれは厳しかったのです。
連続乗車券の購入を決断
しかし、連続乗車券では2つのきっぷの有効期限を足したものとなるため、有効期限2日間の枕崎・川内間の乗車券ともう1枚のきっぷを連続乗車券とすることで有効期限が3日以上となるのです。
さて、組み合わせるもう1枚のきっぷですが、今回の鹿児島中央・枕崎間と川内・国分間のどちらの乗車券でも問題ありません。
どちらの区間も1日で全区間乗るからです。
今回は、川内・国分間の乗車券と組み合わせることにしました。
今回の経路
下図は、今回の経路の簡易図です。
鹿児島中央駅と川内駅の間が重複区間となります。
鹿児島中央駅と川内駅の間は九州新幹線と在来線である鹿児島本線の2つの経路がありますが、同一経路扱いとなるので重複区間となることを避けることはできません。
みどりの窓口で連続乗車券を購入
駅員さんに前日に購入した3枚のきっぷを提示して、「この2枚のきっぷ(「枕崎→指宿」と「指宿→鹿児島中央」の乗車券)を枕崎から川内までと、川内から国分までの連続乗車券にしたい」と言いました。
まずは、「枕崎→指宿」と「指宿→鹿児島中央」の乗車券は払い戻しになりました。
クレジットカードで購入したので、使ったクレジットカードを出して払い戻しの手続きをしていただきました。
そのあと、2枚の連続乗車券を改めて購入ということになりました。
「枕崎→指宿」と「指宿→鹿児島中央」の乗車券は払い戻しという形だったため、連続乗車券に「乗変」は書かれていません。
使用レポート
実際に連続乗車券を使用した旅の様子は、こちらの記事にまとめています。
最後に
今回は、連続乗車券の解説をしました。
ほんの些細なメリットかも知れませんが、それが結構重要だったりするものです。
この記事が、皆さんの鉄道での旅に役立てれば光栄です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。