青春18きっぷ利用者にとって難関とされている場所は全国にいくつもあります。
その中で最難関とされているのが佐伯駅と延岡駅の区間、通称「宗太郎越え」と呼ばれている区間です。
しかし、この区間は様々な変わったことがある魅力的な区間でもあります。
なんといっても、グリーン料金さえ払えば青春18きっぷ利用者であっても特急車両のグリーン車の座席を利用することができるのです(ただし、佐伯→延岡のみ)。
基本的に青春18きっぷ利用者はグリーン料金を払っても特急車両のグリーン車を利用することができないのですが、この区間ではそれが可能なのです。
今回は、青春18きっぷ最難関区間の攻略方法と僕が実際にグリーン車に乗車して宗太郎越えを攻略した話です。
目次
宗太郎越え
概要と青春18きっぷ
「宗太郎越え」 とは、大分県と宮崎県の県境にある「宗太郎峠」と呼ばれる峠を越えるルートのことです。
また、峠の別称としても用いられていて、古くから交通の難所として知られています。
この峠を川に沿って日豊本線と国道10号がほぼ並走しているのですが、今回は日豊本線目線で詳しく説明していきます。
日豊本線の佐伯駅と延岡駅を結ぶ普通列車は非常に少なく、現在では1.5往復(佐伯駅発が朝の1本、延岡駅発が朝・夜の2本)しか走っていません。
特急列車は「にちりん(シーガイア)」が約1時間に1本走っているため、両駅間の移動自体がかなり不便なわけではありません。
ですが、特急列車を利用できない青春18きっぷ利用者にとっては最難関とされています。
特例として特急列車に乗車できる区間があるなかでこの区間はいまだに特例となっていないため、青春18きっぷを利用して越えるためにはこの数少ない普通列車に乗るほかありません。
特に、佐伯駅から延岡駅を目指す場合、普通列車は6時10分発の朝一番の列車しかなく、それを逃すと青春18きっぷ利用者が乗れる列車がないのです。
寝坊なんてしたら大変です。
ですから、青春18きっぷ利用者の中には、この区間では青春18きっぷでの移動を諦めて、乗車券と特急券を購入して特急列車に乗る人も少なくないようです。
(追記)北海道の稚内駅から鹿児島県の西大山駅への青春18きっぷでの日本縦断は、2021年(令和3年)3月のダイヤ改正で4日目までに佐伯駅にたどり着くことが出来ないため、無理となってしまったようです。
佐伯駅から大分方面、延岡駅から宮崎方面の普通列車はそれなりにある(多いとは言えないけど)ので県境を越えてしまえば楽なのですが、越えるのが大変なのです。
宗太郎越えに限らず・・・
ただ、JR九州管内は宗太郎越えに限らず、ほとんどの県境付近で普通列車の本数が少ないです。
- 長崎本線の長崎県・佐賀県の県境
- 日豊本線の鹿児島県と宮崎県の県境
- 肥薩線の鹿児島県・宮崎県・熊本県の県境
理由は簡単で、利用者が少ないから、もっと端的に言えば需要がないからです。
そして、肥薩線を除けば特急列車はそれなりの本数がある(多いとは言っていない)ため、県をまたぐこと自体が大変というわけではありません。
青春18きっぷを始めとする特急列車を利用できないきっぷでは県をまたぐ難易度が増すためいろいろ言われるのであって、今後もこの状況が改善することはないでしょう。
(追記)令和2年豪雨によって肥薩線の八代・吉松間が不通となり、未だに復旧の目処が立っていません。
そのため、鹿児島県と宮崎県が青春18きっぷ利用の観点からほぼ孤立状態となりました。
青春18きっぷで「宗太郎越え」をするためには
佐伯駅側からの場合、 前日までに佐伯駅付近で宿泊し、朝早くに起きて朝一番の列車に乗るしかありません。
寝坊に気をつけましょう。
延岡駅側からの場合、上記のような方法を取るか、19時33分発の列車を待つかのどちらかです。
夜にも1本あるのでので前日までに延岡駅周辺にいる必要はないのですが、その場合は夜まで足止めを食らうことになります。
なので、1日ででるだけ長い距離を移動したい青春18きっぷ利用者にとって悩みのタネであることに変わりありません。
僕たちは佐伯駅側からだったので、前日に駅付近に泊まり朝早くに起きるの一択でした。
前日に青春18きっぷで出雲市駅(島根県出雲市)から長い時間をかけて佐伯駅までやってきて、佐伯市内のホテルに泊まりました。
今回僕たちが泊まったのは、「ホテル金水苑」です。
佐伯駅から歩いて3分ほどの距離にあるこのホテルは、全部屋無料Wi-Fi完備となっており、部屋には冷蔵庫やテレビ(無料の衛星放送も視聴可)などが備わっています。
また、アイロン、加湿器、空気洗浄機、そして自転車など様々な貸出品があります。
朝一の普通列車に乗る方であれば朝食なしのプランになるかと思いますが、その分安い値段で泊まることの出来る駅近くのホテルとなっており、オススメです。
最難関を物語る佐伯駅時刻表
朝早くに起きてホテルのチェックアウトを済ませ、佐伯駅にやって来ました。
6時18分発の列車に間にあるように、6時前に駅に来ました。
この日は3月13日。
3月中旬の6時はまだまだ暗いです。


今回の宗太郎越えのスタート地点である佐伯駅の時刻表は、このようになっています。

大分方面は1〜2時間に1本のペースで普通列車があり、時間帯によっては1時間に2本走っています。
それに対して、延岡方面は普通列車がたったの3本しかありません。
そして、そのうち延岡駅まで行く普通列車は朝一番のたったの一本です。
他の2本は、重岡駅(大分県佐伯市)までしか行きません。
佐伯駅から延岡駅へ向かうのに、ごく普通の人であれば1時間に1本に走っている特急列車に乗れば済む話なのですが、青春18きっぷ利用者は特急列車を利用することができないので、大問題です。
もっとも、佐伯駅と延岡駅の間はは大分県と宮崎県の県境に位置し、駅の利用者が極めて少ないので、両駅を結ぶ特急列車さえあれば十分という考えなのでしょう。

「普通」だけど特急車両
この区間は他にも特徴があります。それは、普通列車なのに特急車両が使われてるいることです。
このことは、駅の案内や時刻表で分かります。

787系特急電車4両編成が使われます。
一部の方に分かる言い方をすれば、「特急きりしま」などと同じ形式です。
特急車両であるものの普通列車であることに変わりないので、特急券は不要ですし、当然のことながら青春18きっぷだけで乗車することができます。
当該列車に乗車
大学生3人による5日間の青春18きっぷ旅もついに最終日。

毎朝の恒例行事だったきっぷにスタンプを押してもらうことも、これで最後となりました。
3人での利用なので、佐伯駅の駅員さんに青春18きっぷに3つのスタンプを押していただき、改札を通りました。

この列車には、車掌さんも乗務します。
ワンマン列車ではありません。
また、この車両(787系電車)自体は4両編成ですが、佐伯・延岡間を普通列車として走る際は先頭車両(佐伯発は1号車、延岡発は4号車)しか使えません(理由は知りませんが)。
その旨はきちんと案内がなされますので、ご心配なく。

しかし、この日は乗客が多くて先頭車両(1号車)に全員乗ることができなかったため、特別に2号車が開放されました。
車掌さんも初めは1号車以外は乗らないようにとの案内をしていましたが、途中から2号車も乗車できて3号車と4号車は乗車できないという案内に変わりました。
ともかく、当日の車内放送に従ってください。
また、この列車は普通車・グリーン車ともに自由席となっています。
ですから、特急きりしまなどでグリーン車指定席・普通車指定席となっている1号車も全て自由席です。
好きな席に座ることができます。
今回は1号車に乗車したのですが、通常は後ろ側(2号車側)の半分しか利用することができません。
なぜなら、この1号車として使用されているクロハ786系の前方(運転席側)はグリーン車となっているからです。
全て自由席とはいえ、さすがにグリーン車にただで乗せるわけにはいきませんからね。

佐伯駅を出発
6時18分ごろ、佐伯駅を出発しました。
この列車は車掌さんも乗務しているため、車掌さんによる案内でした。
ちなみに、3号車と4号車は使わないため車掌は運転士のいる場所で仕事をしているようです。
こういうときって、運転士さんと車掌さんって話をしたりしているんですかね。
それとも、運転に支障をきたすから業務連絡のとき以外は無言なんですかね。

青春18きっぷで特急車両のグリーン車へ
前述のように、この列車では1号車の前方は「普通列車のグリーン車自由席」という扱いとなっています。
青春18きっぷを乗車券とする場合、グリーン車指定席には乗れませんが、グリーン車自由席には乗ることができます(グリーン券は別途購入)。
ですので、今回の列車はグリーン券を購入することでグリーン車に乗ることが出来るのです。
この列車のグリーン券は、みどりの窓口などの駅で購入するのではなく車内購入です。
宮崎空港線でも似たようなことが可能ですが、こちらの場合のグリーン券はみどりの窓口等での購入となります。
僕は、今までグリーン車に一度も乗ったことがありませんでした。
しかし、今回乗っている列車は普通列車であるため、特急料金がかかりません。
つまり、グリーン料金さえ払えば良く、通常より安い値段で特急車両のグリーン車に乗ることが出来るのです。
グリーン車自由席は首都圏の通勤列車の一部にもありますが、それは特急車両の普通車の座席に近いです。
それに対して、今回の列車は特急車両なので、座席の質が全然違います。
今回は、せっかくの機会なのでグリーン車に乗ることにしました。
佐伯駅出発後、通路を車掌さんが通ったので聞いてみました。
「グリーン車に乗ることはできますか?」と。
すると、「良いですよ」と言われて「青春18きっぷなどをお持ちですか?」と聞かれてきっぷを見せスタンプ3つの説明をすると、グリーン車に案内されました。
グリーン車に到着後、車掌さんから「好きな席に座って良いですよ」と言われました。
グリーン車自由席ですから、当然席は決まっていません(首都圏を走っている通勤電車に連結しているグリーン車自由席と同じです)。
今回は2番C席(進行方向に向かって右側)に座りました。
特に理由はありませんが、1人での利用なのでC席が落ち着きやすいかなと思ったところです。

案内されたものの、もちろんただで乗れるわけがありませんので、ここでグリーン券を購入しなければなりません。
ただ、このとき上岡駅(大分県佐伯市)に着く前だったのか少し待つようにお願いされました。
上岡駅出発後、簡易的なグリーン券(かなり薄くてピラピラしていました)を渡され、グリーン料金である980円を払いました。

もちろん、青春18きっぷ利用者だけでなく、通常の乗車券を乗車している方も購入してグリーン車を利用することが出来ます。
787系電車のグリーン車
グリーン車にいたのは、ずっと僕だけでした。
青春18きっぷで一緒に旅をしている友人2人にも確認しましたが、別に良いとのことでした。
なので、事実上の貸し切りでした。
さて、これが僕にとって人生で初めてグリーン車の体験だったのですが、これはヤバイw
まずは、座席幅の違いをすぐに感じました。
そして、座席自体も柔らかく感じました。
背もたれも普通車ではありえないくらい倒すことが出来ますし、前後の座席の間隔も広いので足をかなり伸ばすことが出来ました。
特急車両のグリーン車なので、グリーン車ならではの設備もあります。
まず、バックレストとヘッドレストの両方を調整することが出来ます。

2ヶ所調整できることで、より自分に合ったリクライニング操作をすることが可能です。
座席にある2つのボタンでそれぞれの場所の傾きを調節できます。


座席前方にはフットレストがあります。
畳まれた状態のときは土足のまま足を乗せることができ、手前に広げたときは靴を脱いで足を乗せることが出来ます。
足を伸ばせるだけでなく、足を乗せる場所があるのはいいですね。
個人的には座っているときにずっと靴を履いているのは好きではないので、後者をメインで使いました。


最前列は初めから床に置かれた形になっています。
ただ、実際に座ってみて気づいたのですが、最前列は狭いですね。
そのためか、フットレストも少し大きかったです。

あくまで個人的な感想ではありますが、僕は最前列の座席よりも中間列の座席のほうが快適に座ることができると思います。
座席の上には読書灯がありました。
先ほど説明したリクライニング操作と組み合わせると、読書に快適な状態にすることができそうです。


とは言っても、787系電車は普通車にも全席読書灯が備わっているので、別に珍しくはありません。
テーブルも普通車とは異なりました。
前の座席に付いているタイプではなく、自分の座席のひじ掛けに収納されているタイプでした。
一応窓際にミニテーブルがあるのですが、少し遠い上に小さいのでこちらのテーブルをメインで使うのが良いでしょう。



そして、コンセントもあります(同じ号車の普通車にもありますが)。
コンセント横の説明にあるように、このコンセントはただ挿すだけでは使うことができません。
挿した後に90度時計回りに回転させる必要があります。

宗太郎越えレポート
グリーン車は先頭ではあるものの、787系は783系のように前面展望できないのが残念ですね。
しかし、快適に側面展望はできました。
最初の方で記述したように、古くから交通の難所として知られている場所ですが、それを物語るような景色が続きます。
険しいため、全然スピードを出せないようです。
これは、特急列車も同様。
もっとも、特急列車が全然スピードを出せない区間は、日豊本線にはほかにもありますが。
途中の宗太郎駅(大分県佐伯市)で、南延岡発の普通列車(特急車両)と行き違いました。九州の人であれば、「離合」と言った方が伝わりやすいかもしれません。
この駅は宗太郎越えの秘境駅の1つで、1日あたりの駅の利用者数は1人に満たない状況です。
どちらかというと、信号所としての存在が大きいかもしれません。

延岡駅に到着
気づけば佐伯駅を出発して約1時間、幸せなひとときにも終わりが近づいて来ました。
進行方向に向かって右側には旭化成の工場が見えてきました。

ちなみに、旭化成と日豊本線には大きな関係があることを皆さんはご存知でしょうか。
延岡以南の区間を今のスピードで走行しているのには、1990(平成2)年9月27日に起きた延岡と宮崎空港を結ぶ旭化成の社内定期便のヘリコプターの墜落事故が影響しています。
この事故後、宮崎県と旭化成が一部負担して延岡と宮崎空港が高スピードで結ばれるようになりました。
7時26分ごろ、延岡駅(宮崎県延岡市)に到着しました。

約1時間グリーン車を独占状態で使わせていただきましたが、とても楽しかったです。
佐伯駅にいたときはまだ暗かった空も、延岡駅到着時にはこんなに明るくなっていました
最後に
青春18きっぷで宗太郎越えを無事終えたことよりも、初めてグリーン車に乗れた達成感の方が大きいような気がしましたw
特急料金がかからないことにより、安くグリーン車に乗ることが出来ました。この先グリーン車に乗る機会があるかわからないので、貴重な経験になりました。
佐伯駅から宗太郎越えをする方は、ぜひグリーン券を購入して快適な1時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
特急に乗るときにグリーン車は高くて使ったことがないという人も、この列車は特急料金がかからないのでこの機会にグリーン車を体験してみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
